まずい! それで、家の近くのディーラーに片っ端から連絡をとって事情を話し、「車を売らないでください」と。友人たち、親戚……おふくろを手助けしそうなところすべてに手を回して、協力をお願いしました。

おふくろは、ディーラー2、3ヵ所に電話をかけて断られたところで、やっとあきらめてくれました。免許返納にはオレが付き添い、タクシー券と運転免許証に代わる身分証明書を手にしてようやく渋々納得。最初に返納を持ちかけてから約5年、いやあホントに長かった。

今振り返って思うのは、やっぱり戦後の貧しい時代を生き抜いてきている親世代はパワフルだということ。あの世代に比べると、オレらの世代は人間のつくりからしてヤワ。真っ向勝負じゃ勝ち目はありません。

ちゃんと話す、話せばわかってもらえる的な希望は持たないほうがいいと思います。話し合いを長引かせると事態は膠着するばかり。実力行使も必要だし、時には鬼になることも考えるべきだと思います。

鉄人のおふくろでさえ86歳が運転のリミットでした。でも本当はもっと早い時期になんとかすべきだった。同じような悩みを抱えているみなさん、「親が自分の衰えを自覚し自ら返納してくれる」ことを夢見て、ずるずると決断を先延ばししてはダメです。

人は老いれば判断力は衰えてくるし、欲も深くなってくる。免許を手放さないのが普通の姿なのです。だから、こっちが鬼にならないといけない。親を親と思うな、それが親のためだ。この経験が、少しでもみなさんのお役に立つといいなあ。

昔は大家族だったから、誰かが運転を代わってあげられた。でも今は一人暮らしの老人が確実に増えている。自分の親世代は過渡期なんでしょうね。われわれの世代は、免許の返納からそれこそ施設の入居まで、子どもに頼らず自分で決めないといけないなと思いますよね。

【関連記事】
島田珠代「夫のがんで、娘と離れて暮らした10年。携帯で、洗濯物に埋もれて放心している娘を見て泣いた日」
池畑慎之介さんが『徹子の部屋』に出演。糸島での出来事を語る「72歳ひとり暮らし、海の見える秋谷の家を手放して、エレベーター付きの安全な終の住処を建設。新居では、ご近所さんと親しい仲に」
紺野美沙子さんが『徹子の部屋』に出演。横浜と富山の2拠点生活を語る「息子の独立、母を看取り、愛犬も見送って。断捨離してこれからはモノよりコトに」