(写真提供:Photo AC)
厚生労働省が公表した「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況」によると、2023年の死亡数は157万6016人で、前年より6966人増加した。「多死社会」への突入が危惧されるなか、YouTubeの登録者数67万人の人気僧侶、愛知県・福厳寺住職の大愚元勝さんは「自分のお墓を誰が守るのかという問題はますます深刻化するでしょう」と語る――。そこで今回は、大愚和尚の著書『心が整うおみおくり-残された人がよく生きるための葬儀・お墓・供養のこと』から、おみおくりとの向き合い方を一部ご紹介します。

僧侶になりたくないと思っていた

自己紹介をさせていただきます。私は愛知県小牧市にある佛心宗大叢山福厳寺(ぶっしんしゅうだいそうざんふくごんじ)の住職を務める大愚元勝と申します。

僧名である「大愚」というのは大バカ者という意味。お寺の子に生まれながら、父である師匠の厳しさやお寺の窮屈なしきたりに反発を覚え、はたまた周囲の人たちから何かにつけて「お寺の子なのに……」と言われるのも、「坊主丸儲け」と揶揄(やゆ)されるのにもうんざりして、僧侶にだけはなりたくないと寺を飛び出した思春期。

といって、すぐになりたいものがみつかるわけでもありません。大学に進学して仏教を学び、曹洞宗大本山總持寺での修行を経、大学院で宗教学、仏教学を専攻するも、「やはりどうしても僧侶にはなりたくない」との思いが消えることはありませんでした。

そんな私は大学院在学中に起業し、ビジネスを軌道に乗せたものの社員教育の壁にぶち当たり、人の心とは? 働くって何だろう? 生きるってどういうことなのだろう? と根本的なことについて考えるようになりました。

そして仏教に救いを求めている自分がいたのです。迷った時ほど、幼少期から読んだり聞いたりしてきたお釈迦様の説かれた言葉の数々が心にしみました。

「これまで私がしてきた勉強や修行は、どこかでお寺の後継に必要な僧侶資格のためのものであって、本当の修行ではなかったのではないか」と、自分の未熟さを思い知らされた気がしました。