イラスト : 大塚砂織

 

 

悪い子を魔力で凍らせてしまう「寒波おじいさん」

モスクワの冬。連日氷点下10度前後、日照時間も短く寒さ厳しい時季ですが、新年が近づくにつれ人々の顔つきは明るく華やいできます。イルミネーションや大きなツリーはもちろん、街にクレープや温かいグリューワイン、民芸品などのマーケットが出現し、活気に溢れて夢のようです。

ロシアで子どもたちにプレゼントを届けてくれるのはサンタ・クロース……ではなく、青いガウンを着た「ジェッド・マロース」。

ロシアでは、特に冷えこむ日に「今日はマロースが来ているね」「シベリアは氷点下50度だって! まさにマロースだ」と話します。つまりマロースは“寒波”を意味する言葉。そしてジェッドは“おじいさん”。つなげると「寒波おじいさん」というわけです。
 
彼はもともとスラヴの民間伝承に登場する精霊。厳しい冬の寒さの化身といわれています。地面に届くほど長いガウンに美しい雪の結晶模様が施されているのが特徴で、魔法の杖と底なしの袋を持ち、孫のスニェグーラチカ(雪娘)を伴いやってくるのです。

白や赤の衣装を着ていることもありますが、サンタとはまったくの別人なのでご用心。な
んと、悪い子を魔力で凍らせてしまうこともあるのだとか。
 
実は、ロシア正教のクリスマスは1月7日。ジェッド・マロースはクリスマスではなく、新年を祝う行事の主役なのです。プレゼントは大晦日の夜にツリーの下に置かれたり、家や幼稚園などを訪れて直接手渡してくれることも。

良い子たちは詩の暗唱・歌・ダンスなどを披露して、ご褒美にジェッド・マロースからプレゼントを受け取ります。
 
ロシアの正月休みは、大晦日から10日間ほど。華やかなお祭りは1月半ばまで続き、
雪に覆われた街を彩ります。(モスクワ在住)