創刊以来、《女性の生き方研究》を積み重ねてきた『婦人公論』。この連載では、読者のみなさんへのアンケートを通して、今を生きる女性たちの本音にせまります。今回のテーマは「家事」。できればやりたくない、でもやらねばならない……そんな苦しい胸のうちを聞きました。そして本誌『婦人公論』の記事から「家事」に対する時代の変化を振り返ります。
《婦人公論ヒストリー》
サボりかた教えます
戦後の経済成長とともに、『婦人公論』の誌面は変化していきます。
1950年代から60年代にかけて、暮らしのノウハウ記事も増えました。「家事」が初めて特集されたのは、69年5月号です。タイトルは「家事嫌いのための家事」。冒頭の記事「花森安治から犬養智子へ」(丸山邦男・著)では以下のように世相が綴られています。
〈先ごろ犬養智子さんの『家事秘訣集』という本が発売され、たちまち十数万部のベストセラーになったそうだ。(略)
家事のサボりかた教えます…という《秘本》が、若い主婦たちの間で爆発的な評判になったということは、家事という得体の知れぬ仕事のわずらわしさから、(略)未だに解放されていないことを物語っている〉
一方、暮らしの専門家として当時人気を博していたのが『暮しの手帖』を創刊した花森安治です。54年から始めた「商品テスト」が当たり、〈私設公正取引委員会の商品検察官のような奮闘ぶり〉でした。
そんなハナモリイズムとイヌカイイズムの違いはどこにあるのか。
筆者は花森の哲学には〈なにがなんでも消費を押しつけようとする経済暴力にたいする怒りと抵抗精神〉があり、犬養の哲学には〈家事などという雑用の集積なんて、はじめから主婦の役目とは考えない、大胆な戦後派的な発想〉があると分析しています。