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女性に多く、心身のストレスが影響する病気『線維筋痛症』。その症状や原因、治療方法などを国際医療福祉大学心理学科・山王病院心療内科の村上正人さんが解説します。(取材・文=松井宏夫)

【症状】「シャワーを浴びても痛い」という人も

線維筋痛症患者は80~90%が女性。広い年代に見られるものの、特に30代後半から50代で最も多く発症し、患者数は潜在患者も含め200万人以上と推測されています。

症状は、全身の筋肉や関節に近い部分に慢性の痛みを生じることから始まります。痛みの度合いは、生活に支障のない軽度から耐えがたい“激痛”レベルまであり、「シャワーを浴びても痛い」「痛みで目が覚める」という患者さんも。

また、痛みに加えて「しびれ」「手足のこわばり」「慢性的な疲労・倦怠感」「胃腸障害」「月経困難症」「目や口の乾き」「睡眠障害」「うつ状態」など、さまざまな症状が出ます。

これらの症状が数年たっても改善しない人が少なくありません。20年以上も痛みが続く患者さんもいます。

●線維筋痛症の受診年齢

 

【原因】精神的ストレスも引き金に

長引くつらい痛みの原因は特定されていませんが、現時点で考えられているのは「脳の炎症説」。脳の神経細胞に炎症が生じ、痛みに対して過敏な反応が起きてしまうのです。

また、正常であれば働くはずの下行性疼痛抑制系(痛みを抑えるセロトニン、アドレナリンなどの脳内物質)が機能不全を起こしているため、いつまでも激しい痛みを感じる。

この状況には、女性ホルモンや自律神経など内的環境の変動に加え、肉体的・精神的ストレスが大きく関わっているようです。

「病気やケガ」「手術や妊娠・出産」「死別・離別の喪失感」「経済的破綻」「何年にもわたる介護疲れ」など、さまざまな要因があげられます。