未来に希望がない時代

幸せぐせの答えは、Aの学費を出す、です。Bを選んだ方は、大学まで行かせているし、就職がダメだったから進学なんて逃げている。すでに成人しているのだからその先は自分でなんとかしなさい、という気持ちがあるかもしれません。そういう意味で言えば、Aは親として甘いと感じるでしょう。しかし今の時代を考えると、そのぐらいの甘さは仕方ないとも言えるのです。

昨今、未来に希望が持てない、なんの楽しみもないと感じている若者がとても多いと聞きます。実際、日本の経済は上向いているとは思えません。

そんな時代を生きる若者世代に大人世代が言えるのは、「あらゆる知識を備えて、道を切り拓いてほしい」ということではないでしょうか。社会に出る前の子どもを守ってやれるのは親しかいません。今回のように大学院での勉強ならば、知識を深めることになりますし、先々の助けになるかもしれません。就職先の幅が広がるという場合もあるでしょう。

この連載では、たびたび相続問題について取り上げていますが、子どもに遺産としてお金を遺すよりも、このように学費として先渡しするほうがずっと有意義だと思います。例えば、子どもの将来の結婚資金として貯めていたお金を、学費として使ってもいいでしょう。そして、子どもにはそれがどんなお金なのかも伝えるのです。「あなたが結婚するときのために、少しずつ貯めていたお金を大学院の学費に充てるよ。結婚するときはそのお金はないと思ってね」と。子どもは、親が自分のためにお金を貯めていてくれたことに感謝するでしょうし、以降は親の金銭的サポートはないことも理解するでしょう。いずれにせよ、それが大事なお金であり、大学院でしっかり勉強しなければならないと覚悟もするはずです。

「なんでも希望を叶えてあげる」という態度より、たとえウソでも方便。「貯めていたお金なんだよ」と言って、子どもに覚悟させるのも親の務めです。

(イラスト◎大野舞)
(イラスト◎大野舞)