最古の紫宸殿はどこにある?
『光る君へ』では、内裏や土御門第の内部が、豪華なセットで再現されています。では、実物の寝殿造の建物を見たくなったときは、どこに行くべきでしょうか。
平安時代の皇族や貴族の邸宅の様式を今に伝える建物として、まず思い浮かぶのは京都御所でしょう。宮廷の重要な儀式などが行われた紫宸殿や、日常の生活の場である清涼殿など、天皇が1869年まで実際に住んでいた御殿を見学することができます。
ただし、現存する御所の建物は、平安時代に建てられたものではありません。平安時代のものは13世紀に焼失。その後も焼失と再建を繰り返し、現存する建物は江戸末期の1855年に造営されたものなのです。
また、先述のように、場所も移動しています。現在の京都御所は、里内裏であった摂関家の邸宅のひとつを戦国時代の武将たちの援助を受けて拡大したものであり、かつての平安京より東に位置しています。
つまり、現在の京都御所の建物は築170年ほど、というわけですが、実は京都には、もっと古い時代に建てられた紫宸殿が残っているのです。
それがどこにあるか、即答できる人は相当の京都通でしょう。
正解は、世界遺産である仁和寺(真言宗御室派・総本山仁和寺)です。仁和寺の本堂である金堂(国宝)は、江戸時代の初め、1613年に造営された御所の紫宸殿を移築したもの。これが現存する最古の紫宸殿であり、当時の宮殿建築を伝える貴重な建築物として、国宝に指定されているのです。
今の京都御所より240年以上も古い紫宸殿が、あの仁和寺にあったとは!また、同寺院の御影堂(重要文化財)にも、慶長年間(1596年~1615年)造営の清涼殿の一部が使われているそうです。