うまいけど、泣けないね

元来、歌声喫茶は、巷にある昭和歌謡、フォークソング、童謡唱歌、シャンソン、ロシアの歌など、様々なジャンルの歌をみんなで声を合わせて歌う空間。ベイビーブーもオリジナルではなく、カバー曲を歌うという方向にシフトしていく。

「でもそのころの僕らは、どんなポピュラーな名曲でも、僕らなりの個性的なアレンジで、おしゃれに歌うというスタイルを続けていました」というユースケ。ある日、「ふるさと」を歌った時のお客さんからの一言が、彼らを変えることになる。

「君たちの『ふるさと』はうまいけど、泣けないね」。

もしかしたら、自分たちは聴く人の思い出を壊すような歌い方をしてしまっていたのではないだろうか、本当に聴いている人たちのことを考えて歌っていただろうか、という原点に立ち戻ったベイビーブー。勉強のためにのぞいた「ともしび」は本当に彼らを成長させてくれていた。

ボニージャックスとの出会いも、ここ「ともしび」だった。店長の齊藤さんは、ボニージャックスのメンバーである故・西脇久夫さんとベイビーブーの出会いを、偶然ではなく必然だと話す。

「西脇さんは昔からのお客さまでした。いつもビールを美味しそうに飲んで、気分が乗ってくるとお客様と歌うことも。ある日、ベイビーブーのマンスリーライブに偶然西脇さんがいらして、目を輝かせて聞いていたのを覚えています」