ミュージシャンの財津和夫さん(右)と娘のけいこさん(左)(撮影:鍋島徳恭)

 

人気ミュージシャンとして数々のヒット曲を世に送り出してきた財津和夫さん。昨年から今年にかけて「チューリップ50周年記念ツアー」を展開し、私生活では大病を克服、孫にも恵まれました。「年をとるのも悪くない」と話す日々はいかに――。娘のけいこさんと語り合います(構成=福永妙子 撮影=鍋島徳恭)

<前編よりつづく

2つのピンチとこれからのこと

けいこ お父さんはずっと元気な人だと思っていたけど、あれは私が中学生の頃だったか、すごく調子が悪かったときがあったでしょう。

和夫 20年前、55歳くらいの頃だったかな。体力的にも衰えを感じ始めた時期で。あなたたちは思春期で大変なときだったし、公私ともにいろいろなことが重なって、ちょっとうつみたいになってね。

朝起きても、足を踏み出す一歩が出ない。何をやっても楽しくない。仕事もずっと強引にやってきていて、それがまかり通ってたところがあったけど、「このままでいいのか」と。未来が見えない閉塞感に苛まれ、どんどん落ち込んでいく。

けいこ すごく大変そうだなと思ったけれど、私はどうしていいかわからない。子どもに気を使われることで、逆に、お父さんが気に病むのじゃないかと思ったりもしたので、とにかくいつも通りに過ごそうとしてた。

和夫 楽になったのは60代になってから。己を知る、というのかな。高みを目指してもがいていたけれど、「自分はこれでいいんだ」「十分だったんだ」と思えたら、ふっと楽になった。あれは更年期障害だったのかもしれないね。ともかく、みんなには迷惑をかけた。