けいこ 日頃の親子関係のなかでは見えてこないお父さんの考えを文章で読んで、面白かった。で、「じじぃの楽しさ」とは?
和夫 さっきもちょっと話したけど、若い頃は、「自分にはもっと可能性があるはず」「新しいことをしたい」という思いで生きてきた。
でも、歳をとり、未来がないとわかってからは、そういうのを全部捨てられるの。この生身の自分のままでいいじゃないかって。周囲に気を使って〈いい人〉を演じなくてもいいし。諦めることのよさっていうのもあるんだよ。若いときは苦しいよね。あなたも今、そうじゃない?
けいこ すべてに対し、「もっと、もっと」と思ってしまう。
和夫 かわいそうにね。でも、ばばぁになったら楽になるよ。気軽に悪態もつけるし。(笑)
けいこ たしかに、今のお父さん、のびのびしてる。
和夫 肉体は老いているけど、気持ちよく今日を生きられて、これって意外と幸せじゃん、と思えるようになった。
けいこ この際、娘に言いたいことも聞いておきましょう。
和夫 子育てで疲労困憊だよね。グジュグジュ言いながらも、やるべきことをちゃんとこなしている。僕は100点満点をつけたい。
けいこ おお~。
和夫 で、これからも旦那さんと仲よく。それと今回、僕の本に挿絵を描いてくれたよね。わが家はみんなバラバラで、あまり干渉し合わないけど、実は、もっとベタベタしたいなと思うこともあったんだよ。だから、僕の本にあなたが参加してくれたことがとても嬉しかったし、これからも一緒に何かできたらいいだろうなって……。
けいこ なるほど。今日は普段聞けないお父さんの本音も聞けました。私からお父さんへは、これからも元気で、健康で、孫といっぱい遊んでね、ということかな。そうそう、お父さんが歌っている映像を子どもたちに見せたら、「じぃじ、すごく上手ねぇ」と言ってたわよ。
和夫 今日の対談用に用意したコメントだな。(笑)