下着姿のまま、でっぷりとした尻や腹を丸出しにし、大きな鏡の前でアシュリーのようにセクシーなポーズをとる。うん、悪くない。どのポーズもキマっていて、思わず今後の身の振り方を考えたほどだった。

正気に戻れば、首から下が同じでも、私がアシュリー・グラハムではないことぐらいわかる。けれど、鏡に映る己の肉体を見て「モデルと同じ。悪くない!」と感じて見入ったあの瞬間は、最高に気分が良かった。胸にたぎるものがあった。いままでなら、鏡から目を逸らし、見なかったことにしていた瞬間だ。

人気プラスサイズモデルは、アシュリーだけにとどまらない。イスクラ・ローレンスはもはや殿堂入りだし、マイラ・ダルベシオ(彼女のサイズはたったの十三号!)はカルバンクラインのモデルを務めたこともある。

タラ・リン、ステファニア・フェラーリオ(彼女は「従来のモデルより体が大きい」という理由だけで、プラスサイズモデルと呼ばれることは嫌がっているようだけど)、ジョーディン・ウッズ。どのモデルからも、己の肉体を愛し、尊重していることが、表情やポーズから真っ直ぐ伝わってくる。「彼女、太ってない?」なんて疑念は、こちらに微塵も抱かせない。

彼女たちは大胆で、セクシーで、キュートで、個性的。そして、自信たっぷり。意地悪を言ってくる無粋な輩には、時に辛辣なジョークで、時に真面目な意見でガツンと言い返す。

もし、彼女たちに「綺麗だけど、もうちょっと痩せてたらねぇ」なんて言おうものなら、周りからも白い目で見られるんだから、良い時代になったものだ。

少し前まで「世間の普通」からはみ出していたあれこれが、どんどん肯定的に提示されるようになってきた。かつての「普通じゃない」が頻繁に人の目に留まるようになると、それはやがて羨望の眼差しで受け容れられる。こういう風に、価値観がひっくり返る瞬間に立ち会うのが、私はたまらなく好きだ。

個人的には、ふくよかな体は食べる行為を彷彿とさせやすいので、セクシーに映るんだと思っている。食べる行為って、セックスと似ているから。

ちなみに、私は筋骨隆々ならぬ、「筋肉隆々」の女性モデルたちにも注目している。だって魅力的なんだもの。華奢でも、ふくよかでも、「筋肉隆々」でもなんでも、魅力的なものは魅力的なのだ。

 


『これでもいいのだ』好評発売中!

ジェーン・スーさんの『婦人公論』人気連載「スーダラ外伝」が1冊に! 「私の私による私のためのオバさん宣言」「ありもの恨み」......疲れた心にじんわりしみるエッセイ66篇

『これでもいいのだ』特設サイト