寄りかかり合って生きていく

倍賞 そうやって吐き出してからは、だんだん向こうも変わってきました。きっと彼も努力しているんですよね。おととい私、仕事で朝が早かったんで、前の夜に「飛行機の中で食べるから、起きたら食べずに出かけるね」と言って寝たの。すると朝、作ってるんですよ。玉ねぎのスープと茹で卵と、ヨーグルトに果物をのっけたのと。「どれかひとつでも食べて行って」と。

 素晴らしい!

倍賞 ありがたいなと思いましたから、残さず食べましたよ(笑)。ただね、女の人は料理を毎日やっても別に感謝はされないですよね。でも男の人がしてくれるとありがたいなって思うのは不思議ですよね。

 そこはやっぱりお互いに「ありがとう」という感謝の気持ちが大事なんじゃないかな。ご飯を食べたら、「おいしかったよ」とかね。

倍賞 たとえまずくてもいいんですよね。相手のことを想って一所懸命作ってくれる気持ちがうれしいでしょ。「今日はしょっぱかったな」「ちょっと甘いな」とか、ひと言だけでも違うんじゃないかしらね。

味付けの感じ方で体調の変化にも気づけるし、お互いの健康状態のチェックにもなる。歳を取って、会話がなくなってきた時こそ、食卓での声がけは大事ですよね。最近はまた料理することが楽しくなり、ちょっと無理しても作るほうがいいなと思います。

 口論になった時は、どうおさめますか?

倍賞 うちは翌朝起きたら何事もなかったかのように、「おはよう」と言うところから始めるんです。私ね、「行ってらっしゃい」とか「気をつけてね」とか、声かけ運動は意識的にしています。

 声かけ運動! それは大事ですね。喧嘩したあとでも、自然に仲直りするきっかけになる。あのね、夫婦は歳を重ねるほど、お互いに認め合う、必要とし合うのがいちばん大事だと思います。だから僕は「いてくれなくちゃ困るんだよ」という雰囲気を妻に伝えるんですよ。

倍賞 素敵! 必要とされてるんだなと思えたら、うれしいですよね。