「私ね、「行ってらっしゃい」とか「気をつけてね」とか、声かけ運動は意識的にしています」(倍賞さん)/「夜寝る前に夫婦で向き合って手を取り合い、軽い屈伸運動をしているんです」(藤さん)

喧嘩して別行動しても。帰る先は…

倍賞 うちはね、今もぶつかり合うことがありますよ。私は歌手として音楽家の主人とふたりでコンサートをすることがあるんです。「男はつらいよ」とか「下町の太陽」などを歌うんですけど、お互いに音楽に関しては頑固なところがあるようで、なにかしらぶつかって譲り合えないことがあるんですよ。

 お互い表現者同士だから。

倍賞 でも、そのうち「音楽家が言うことはやっぱり正しいんだな」と歩み寄ったり、ピアノを弾いたり作曲したりする主人も、歌い方やおしゃべりの間合いに関してはイマイチわからないところがあるようで、「そういう時は、こうしたほうがいいと思うよ」と私が言うと、「あ、そうか。じゃ、そうしよう」となることも。

 一緒にひとつの仕事をすると、どうしてもね。

倍賞 昔、レコーディング中に彼が気分を害して途中でスタジオを出て行ってしまい、私も作業をやめてしまったことがあります。おかげで借りていたスタジオがパァになってしまいました。

 喧嘩して別行動とはいえ、帰る先は同じ家。(笑)

倍賞 その時は、私は帰りに友だちと会って「アタマにきちゃった」って愚痴を聞いてもらって気を晴らした覚えがあります。でもたいてい帰宅して食事の用意をして、いつものように一緒に食べてるうちに……。

 会話が戻ってくる、と。そんなもんじゃないですか、どこの夫婦も。映画の中の勝みたいに、妻が何をしても何を言ってもつれない反応しかしないんじゃ、喧嘩も始まらないけれど。

倍賞 だいたい女には家事が待っていますから、そっちに気が行っちゃいます。大分前の話ですけど、コンサートの日、ふたり一緒に家を出て、仕事を終えるとふたりで帰る。帰って、キッチンでご飯の支度をしていた時、「あれ? これっておかしくない? 私だけまた働いている」と言ったら、彼は「そうだネ」と。その日を境に彼も変わっていきました。

 割り切れない想いをためこんでいたんだ。(笑)