そんな時代の波にちゃっかり乗って、いろいろな仕事をしているうちに、物書きとして自分がやりたいことや、「これしかできない」こともわかってきた。
私は、ヒトやモノやコトに関心がある。自分の思いをストレートに語るエッセイストより、映画やファッション、社会現象などを通じて自分が感じたことを書くコラムニストのほうが向いているのではないか、と。
自分の資質に気づいたおかげで、83年頃からは、いまに通じる映画紹介コラムの仕事も増えてきました。
85年から現在まで39年続いている『サンデー毎日』の連載もスタート。『週刊文春』映画評の連載も35年くらいですかね。
それまでは女性向けのファッション雑誌がメインだったのが、「おじさん週刊誌」でコラムを書くようになったことが、私にとっては、むしろ、いい方向転換になったのだという思いも込めて、雑誌連載が始まったことも年表にしっかり記しておきました。
東京・勝どきに引っ越してきたのが、86年。それまで住んでいた代々木のマンションから移ったのは、親しくしていた女友達が勝どきに引っ越して、昔ながらの街並みが残るこの土地に魅力を感じ、銀座にも近い、という単純な理由から。
まったくの偶然なのですが、じつは、ここは父が生まれ育った町だったんです。父の父にあたる私の祖父が、勝どきで工業試験場の技師をしていたそうで。
父は86歳で亡くなりましたが、生前、「勝どきに引っ越したのよ」と伝えたとき、なんだかホッとした顔をしたのを思い出しました。
仕事の変遷をメモした年表なのに、「86年、勝どきに引っ越し。そこは父の生地だった」なんて、つい書き留めてしまったのだけれど、我ながら面白い偶然だったな、と感じます。