母が亡くなった後に見つけた1冊のノート

当初は、自分だけの備忘録のつもりでしたけど、この年表を読み返してみると、自分以外の人にとっても、なんらかの役に立つ記録になっているかもしれません。

一世を風靡した有名人や著名人に限らず、私のような一介の物書きや、ごく平凡な生活を送っている人の場合でも、自分が生きてきた日々の記録を残しておくことは、残された人たちにとってもきっと意味がある――のではないか、と。

というのも、90歳で亡くなった母の遺品を整理していたら、そのなかに1冊のノートを見つけたんです。子どもの頃、私が数ページ使っただけで残してあった学習ノートの余白のページに、母の日記のようなものが書いてあって。

別に、自分の心境を綴ったような深刻な内容ではなく、その日に何を買ったとか、何を食べたとか、子どもがケガをしたとかの、日常生活のほんの些細な出来事を書き留めたものなんですけどね。

でも、それだけでも娘の私にとっては貴重な記録です。毎日、ほんの数行書いてあるだけですが、その日記を読み返すだけで、まるで古い映画を観ているかのように、当時の家族の暮らしぶりや、四季折々の庭の景色などが鮮やかによみがえってきます。

また、当時の100円がいかに価値あるものだったのか、雪が降ったらどこまで雪かきすればいいのか、という昭和の暮らしぶりがリアルに伝わってくるのも面白い。