講談社「DAYS NEO」。以下写真:『婦人公論.jp』編集部)

出版不況が言われて久しい昨今。書店の数が減り、近年では物流問題も加わるなど、その環境は厳しさを増すばかり。そんな苦境でもヒットを遂げる本や出版社に隠された<強さのヒミツ>とは? 今回は科学新書『東洋医学はなぜ効くのか』のマンガ化コンテストを手掛けているブルーバックス編集部・出口拓実さんにお話をうかがいました。(全2回の2回目)

「良いものを作った」だけでは届かない

――新書『東洋医学はなぜ効くのか』を基にしたマンガコンテスト。硬いイメージのある「科学新書」からは、なかなか想像しにくいお話です。 想像できたとしても、普通なら実現するには相当なハードルが…。 それをぐいぐい進められるのは、やはり講談社さんだからかも。

まず部署の垣根をこえて気軽に相談できる環境がある。それに加えて、マンガやWEB、さらにはゲームでも、別の形になったものの扱いを得意とする部署が社内に存在しているのは確かです。

お話をうかがったブルーバックス編集部・出口拓実さん。24年12月からはクリエイターズラボと兼務に。

私自身、以前はテレビ局の報道記者で、本を一冊も作ったことがないまま、講談社に転職してきて今は書籍編集の前線に立っています。そうした多様なバックグラウンドを持つ社員がいる、という環境もありますよね。

ーーテレビから出版に移ったことに加え、一般的な出版社に比べてかなり進んだ環境で仕事をされている今、あらためて書籍や出版そのものについてどう思われますか?

今はあらゆる媒体やメディアが、消費者の限られた時間を取り合っています。何かを作って、待っているだけでは消費者の目に入らない。

自らの経験を踏まえても、良い作品を広めるために、発信者である私達の側が媒体やメディアを駆使して、消費者の皆さんに届ける努力や工夫をしなければならない、とあらためて感じています。

自分はよく「クロス」という言葉を使うのですが、あの手段とこの手段をクロスさせて、とにかく消費者の皆さんの目の届く範囲まで持っていき、「ブルーバックス」の作品を届けたいーー。もちろん難しい挑戦ではあるのですが。