複雑な背景
じつは、2013(平成25)年以来、韓国が「産業革命遺産」の一部で朝鮮人が強制的に働かされていたと問題視していた。そのため、2015(平成27)年の世界遺産登録の際に、日本のユネスコ大使がつぎの声明を発せざるをえなくなった。
より具体的には、日本は、1940年代にいくつかのサイトにおいて、その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと、また、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる所存である。
つまり情報センターには、このような使命もまた課せられていたのである。
ところが、センター側は端島の元島民ら100人以上にインタビューを実施した結果、韓国側の主張の一部が事実とは認められなかったとして、なんと展示を通じて反論を開始した。加藤氏もまた、保守系メディアで積極的にこの問題を取り上げた。
こうして先述のようなアンケートや展示ゾーンが形成されたわけだ。以上のような複雑な背景を理解していないと、突然の韓国批判に戸惑ってしまうことだろう。
もっとも、加藤氏らの主張にまったく理がないわけでもない。韓国側の強調していた「過酷な労働の証拠写真」が、実際は完全に別物(撮影の場所、時期が異なり、被写体も日本人)だったからである。突き止めたセンター側もそれゆえ、韓国のプロパガンダには負けぬと鼻息が荒い。
このように端島は、図らずも「歴史戦」の最前線となっている。