(写真提供:Photo AC)
都市部や郊外で、タワーマンション建設や新規の住宅地開発が積極的に進められている昨今。しかし「不動産価格の高騰で、住宅の入手困難化が深刻」と指摘するのは、都市政策や住宅政策を専門とする、明治大学政治経済学部・野澤千絵教授です。そこで今回は、野澤教授の著書『2030―2040年 日本の土地と住宅』から一部引用、再編集してお届けします。

入手困難化する住宅

都市部ではタワーマンション建設ラッシュ、郊外では新規の住宅地開発、そして空き家の増加……と、都市の中に私たちが住まう余地は明らかに増えています。

にもかかわらず、今、なぜ、住宅は高騰し、入手困難になっているのでしょうか。

住宅が入手困難化している実態を少し紹介しましょう。

不動産経済研究所(1)によると、2023年に新規供給された首都圏の億ションは4174戸と、バブル期の1990年の3079戸を大幅に超えました。特に、東京23区の2023年の新築マンションの平均価格は1億1483万円にまでなりました。

例えば、超高額物件として有名になった港区の三田ガーデンヒルズでは、2023年2月の販売開始時、2億3100万~45億円(2)で売り出されました。

ここは、昭和初期に建てられた旧逓信(ていしん)省簡易保険局庁舎の広大な跡地(約2.5万m2)の14階建て1002戸(一般販売対象は952戸)の分譲マンション(2025年3月竣工予定)です。

最多販売価格は3億8000万円台(31戸)で、平均の坪単価は1300万円程度、仕様がさらに豪華なパークマンション棟の坪単価は1700万円程度とも言われています(3)。

そして、三井不動産レジデンシャルのウェブサイトを見ると、すでに939戸の販売が終了したとされています。

こんなにもたくさん超高額物件を買える人がいることに驚愕したのは私だけでしょうか……。