渡辺 美人だしね。いや、木野さんも美人よ? だけど如月さんは、私たちとはまた違ったタイプの美人じゃない(笑)。知的でさ。
木野 私たち田舎者だから話が合わないのかなあって、ちょっと劣等感を抱いたりしたよね。
渡辺 でも木野さんは大学を出て美術の先生をしてから演劇を始めているので、しっかりした土台があるのよ。如月さんは東京女子大学だし。
私は舞台芸術学院出身でいわゆる専門学校だから、「高卒なんです」って如月さんに言ったことがあるの。そしたら「高卒で、作家も演出もできるなんてすごいわね」って。もうカチーンときちゃって。(笑)
木野 あの頃の小春ちゃん、とんがってたから。そのうち「アジア女性演劇会議」の実行委員長を務めるようになって、各国の女性演劇人を集めた会合に、私たちも呼ばれて。
渡辺 いざ話してみたら案外いい人でさ(笑)。「みんなで何かやりましょうよ」と言っていた矢先に、くも膜下出血で帰らぬ人になってしまった。
木野 私たちが芝居の話をするようになったのはそこからだから、小春ちゃんに引き合わせてもらったようなものね。
渡辺 女性ではもう一人、岸田理生さんが思い出深いわね。喫茶店で私の手を握りながら、「よかった、やっと女性が出てきてくれた。これまでどれだけ心細かったか!」と言われたことがあるの。
演劇のなかでもアンダーグラウンド、かつアバンギャルドなジャンルで女性がやっていくのは、想像以上に大変だったはず。その岸田さんも、如月さんが亡くなった2年後に帰らぬ人に……。私たち、生き残りみたいになっちゃった。