木野 えりとの仲が続いているのは、バカ話ができる呑み友達だからってことだけじゃないからね。根底にリスペクトがあるから、えりが頑張って芝居やっていてくれることに感謝しているし、いつまでも元気でいてほしいと思ってる。

渡辺 『さるすべり』の時もそうだったけど、木野さんは「こうしたほうがいい」と、意見をハッキリ言ってくれるのよね。説得力があるし、思ったことを正直に伝えてくれる存在はありがたい。

夢見る乙女みたいなところがある私に対して、木野さんはいつも冷静に現実を見て、手綱を引く役割を買って出てくださる。それでいて若手の演技指導になると、ほら、有名な武勇伝があるじゃないですか。包丁を持ち出したっていう。

木野 そんな物騒な話と違うわよ。あれは、相手役の人がちっとも驚いた芝居をしてくれないから、どうしたらもっと驚いてくれるんだろうって家に帰ったら包丁が目に入って。それで翌日、稽古場に持っていって、ふっと出してみたのよ。

渡辺 それは、驚いたでしょう?

木野 その驚き方がとってもよかったから、「それよ」って。

渡辺 それにしても演劇界って、いまも変わらず男社会ですよね。「女性差別なんてしません」みたいな雰囲気を出しながら、細胞レベルで差別していて、そのことに気づいてもいない男性演劇人が非常に多い。

だから同じ違和感を抱え、ともに闘ってきた女性は私にとってみんな同志。そういう意味でも、木野さんとはこれまでも、これからも、ずっといい関係でいられるような気がします。

後編につづく


渡辺えり古稀記念2作連続公演『鯨よ!私の手に乗れ』『りぼん』

作・演出:渡辺えり
日程・会場:
<東京公演>本多劇場
『鯨よ!私の手に乗れ』2025年1月8日(水)~1月17日(金)
『りぼん』2025年1月11日(土)~1月19日(日)
<山形公演>山形市民会館
『りぼん』 2025年1月22日(水)18:00
公式サイトhttps://office300.co.jp/