事故原因のトップは浴槽での溺水
では、実際に家庭内ではどのような事故が起きているのでしょうか。死亡者がもっとも多いのは「不慮の溺死及び溺水」で、65歳以上では年間6585人が亡くなっています(令和5年人口動態統計。以下同)。
溺死事故は冬場に増加しますが、おもな原因は、温度差による急激な血圧の変化。暖房で暖められた部屋から寒い廊下に出て、さらに寒い脱衣所で服を脱ぎ、浴槽に入って全身に温熱刺激を受ける……。
このような外気温の変化にともなって、血圧も同じように上下して心臓や血管に負担がかかり、失神や心筋梗塞、脳梗塞を起こして意識を失ってしまうのです。これが溺死の原因で、「ヒートショック」と呼ばれています。
2番目に多いのが「窒息」で、3030人の高齢者が亡くなっています。年齢を重ねるにつれ、食べものを噛み砕く咀嚼力や飲み込む力=嚥下力が衰え、さらに食物の消化を促す働きを持つ唾液の分泌量も減少。その結果、うまく飲み込むことができなかった食べものの塊が喉を塞ぎ、呼吸ができなくなって窒息が起こります。
喉が詰まる原因になる食べものといえば、お餅やごはん、パンなどの炭水化物。年末年始はお餅を食べる機会が多いため、12月から1月にかけて窒息による死亡者が多くなります。また、認知機能の衰えが原因で、プラスチックとアルミでできた薬の包装シートを誤って飲んで窒息するという不慮の事故も増えているので、注意が必要です。