九月のはじめに、もうだめかというところまで衰えたニコだったが、エリックが来て復活した。そしたら今度は、早朝にあたしを起こすようになった。ニコはあたしの枕の隣で寝ている。それがくーんと鼻を鳴らすから、あたしは飛び起きる。庭につれ出すと(うちは集合住宅の一階で庭がある)、おしっこをする。ときにはうんちもする。

あたしは夜更かしなので、五時とかに起こされたらたまったもんじゃない。ニコに合わせて早寝早起きを心がけたが、なかなか眠れず一時になり、二時になり、無慈悲なニコの声に起こされて、泥の中からひっぱりあげられるような苦痛を味わうのだった。二度寝すると寝過ごしてゴミ出しを失敗した。

早朝以外のニコは眠っている。生きてるのかなと思ってよく見ると、生きている。お腹が動いている。一日に何度もそうやって確かめる。夫のときも父のときも前の犬のときもよく確かめた。でもそれは必ず生きてるときなのだ。死んだときはすぐわかった。生きてるか死んでるか確かめるために見直す必要はなかった。つまり生きてるのか死んでるのかとあたしが考えるとき、ニコは生きている。ただ死んだように眠っているだけだ。