秀逸なキャラクター造形と映像
しかし!! 大筋で言うと、「愛する妻をローマとの戦いで失った男が囚われて奴隷となり、その後剣闘士に身を落とす。しかしその天性の才能で勝ち続け、ローマの人気剣闘士となって、宿敵の将軍や皇帝に対峙する」…と言う大筋は、「前回とほぼ同じじゃん!」です。これは、「人間はいつの時代も変わらない」と言い切るリドリー・スコット監督の哲学が見て取れる「ザ・一本調子」。けれどその分キャラクター造形と映像が秀逸。父と同じ道をたどる中で、一度も会っていない父親を発見していくルシアスの心象には強く共感できます。
しかし、アクションを優先させ過ぎて、人間ドラマ的な盛り上がりがちょっとだけ薄かったかもしれません。私としては、ルッシラとマキシマスの過去の関係などを描いてほしかったところですが、24年でかなりウェイトをあげておっさんになったクロウに17年以上前の青年期ロマンスを演じさせるのは難しかったのでしょう(涙)。
一方で拍手したいのは、ルッシラ役のコニー・ニールセン。24年の時を経てなお美しく、「マキシマスの愛人にしてルシアスの母」、そして「当時最強の将軍・アカシウスの妻」を、熟女の魅力たっぷりに見せてくれました!
コニー・ニ―ルセンは、私と同じ1965年生まれで今年60歳。前作より多少は老けて見えますが、とても自然な美しさに満ちていて、私たち熟女に自信と希望を与えてくれます!
そして主役のルシアスを演じたポール・メスカル。この役のために8キロ増量し、トレーニングで体を作って挑んだそうですが、実に強くて硬そうな厚い胸板、鍛え抜かれた頑強な男の肉体が見事。不思議なのは、力強い肉体をカメラがとらえているのに、ルシアスの繊細な内面を私たちは感じるのです。キャスティングは完璧だと感じました。ポール・メスカルは、なんでも演劇俳優として著名で、その舞台を見たプロデューサーからオーディションの話が来たというのですから、生え抜き実力派演劇人のサクセスストーリーです!