なるべく持たないようにしているものもある。折り畳み式の傘である。雨が降りそうな気配があると、

「傘を持っていったほうがいいですよ」

秘書アヤヤが勧めてくれるが、気乗りがしない。まだ降っていないのに長傘を持って出かけたら、必ずやどこかに置き忘れるだろう。さりとて折り畳み式の傘をバッグに入れたら、またもや荷物がかさばることになる。

「降ったときに考えます」

そう宣言して玄関を出ようとするものの、足が止まる。もし傘がないと歩けないほどの大雨になったらどうしよう、コンビニで買う羽目になる。でもこれ以上ビニール傘を傘立てに増やしたくない。もはやじゅうぶん過ぎるほどの傘で傘立てはいっぱいなのである。

ならばやっぱり折り畳み傘を持って出るか。ところが、意を決して折り畳み傘を持った日にかぎって雨は降らないことになっている。