いつの頃からか、セカンドバッグとして紙袋を使わなくなった。荷物が減ったわけではない。紙袋のかわりに布袋を持つようになったからだ。
布だから持ち歩いてもバサバサ音を立てない。静かである。おかげで歩いているだけで、「来た!」と気づかれることがなくなった。大いなる進歩である。しかし、私の姿を認めた人は異口同音に言う。
「いつも荷物が多いねえ」
そこは否定できない。しかし言い訳する材料はたくさんある。
まず、ハンドバッグには財布、手帳、スマホ、家の鍵、名刺入れ、スマホの充電ケーブルは、最低限入れなければならない。スマホと財布のサイズが大型化したせいで、さらにかさばるようになった。
洒落たハンカチは滅多に入れないが、汗かきなのでたいていハンドタオルを持ち歩く。これも幅を取る。最近、気管支炎を経験し、以来、いつどこで咳が止まらなくなるか心配なので、咳止めの薬や飴を常備している。マスクも持っていると安心だろう。ついでに腰痛がひどくなったときのために痛み止めも必要だ。目がショボショボしたり乾いたりしたときのための目薬もあると助かる。
それらがバッグのあちこちに散らばらないよう、まとめておくための小袋も欠かせない。幅を取る。