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日本では、性犯罪が起きても事件にならないケースが多いそうです。なぜそのようなことになるのでしょうか? 2017年、伊藤詩織さんが裁判を起こした際、性暴力の被害者を支える望月晶子弁護士が語った問題提起は、今でも続いています

「合意のうえで」と主張され

詩織さんが会見を開いて被害を訴えましたが、大変なご苦労や葛藤があっただろうと推察します。同時に、もし今回の件が事件化されなければ、彼女がさらにネット等でいわれなき誹謗中傷をされてしまうのでは、と心配です。

そもそもいまの日本では、性犯罪が事件化されないケースが後を絶ちません。性犯罪というのは密室で起こることが多く証拠が少ないため、立証が難しいのです。

内閣府の調査によると、加害者との関係は、「配偶者・交際相手」「親・兄弟」「職場・学校の関係者」「知人」などで、面識のある人物からの犯行が7割を超えています。さらに、被害に遭った後、誰にも相談しなかったという女性が、約7割にのぼっているのです。

被害者支援を続ける弁護士の望月晶子さん

また、仮に加害者の精液などの物証が残っていたとしても、「合意のうえでの性交だ」と主張されてしまうケースが多い。この場合、「合意のうえではなく、相手からの暴行や脅迫があった」ということを、被害者側が証明しなければ犯罪が成立しません。この「暴行・脅迫要件」が認定されず、事件化されなかった性犯罪が、これまでにもたくさんありました。

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●暴行・脅迫が認定されず、無罪となった性犯罪の裁判例

最高裁(2011年7月25日判決)
通行中の18歳の女性をビルの階段踊り場まで連れて行き姦淫「逃げたり助けを求めることが容易にできる状況であり(中略)叫んだり、助けを呼ぶこともなく」として、被害者が抵抗できたはずだ、と結論づけられた 

札幌地裁(2011年10月25日判決)
20代女性が顔見知りの車に乗せられ、車内で姦淫「殴る蹴るなどの強度の暴行や脅迫的な言動を一切加えていない」「夜間の被告人の車の中である」「ブルゾンのファスナーやシャツのボタンに、特段の破損やほころびがない」ことを理由に、被害者が大きな抵抗をしていなかったとされた
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