酒井 実はお墓と位牌について、ちょっと悩みがありまして。以前、沖縄の位牌(トートーメー)について調べたことがあります。沖縄では位牌を継承するのは男性に限られていて、女性は位牌を継承できない。離婚して家に戻ってきた女性は、位牌にもその家のお墓にも入れないと。

島田 そのようですね。

酒井 ある人が、本土でも本来そうなのではないか、と。私は兄を亡くしたので、酒井家の仏壇は私の家にあるのですが、未婚の娘が仏壇を守るのは縁起が悪い、と聞いたこともあります。未婚で子なしの私は、本当なら酒井家のお墓に入れない、とも。そのあたり、宗教学の立場ではいかがでしょう。

島田 そういうことを言う人もいますが、本来、関係ないでしょう。そもそも庶民が墓を持つようになったのは、比較的最近のことです。江戸時代は武士や名主の家には墓があったけれど、庶民は土葬。明治に入っても、お墓は一部の人のものでした。だから、墓を守るとかお墓参りをするという考え方自体が比較的新しいんです。

酒井 えっ、そうなんですか?

島田 死者の供養は、家の仏間にある仏壇で行うのが一般的でした。でも、戦後徐々に「家」の機能が低下してくることによって、墓を外に作り、家から離してしまった面もある。その後、高度成長期のマイカーブームで、郊外型の墓地が次々と生まれた。ですから1960年代以降、お墓が増えたわけです。

酒井 先祖代々、延々とお墓が続いてきたのかと思ったら、そうでもないんですね。

島田 しきたりは時代によって変化していくもの。あまり縛られることはないと思います。

 伝統的な家族観やお墓に関しては、昔からあるように錯覚させられているんでしょうね。それが呪縛にもなる。特に女性には。

島田 縛りたい人がいるんですよ。商売にしたい人もいるし。

酒井 なるほど。

島田 ある機関が2015年に行った調査だと、「お墓を準備しているか」という問いに、先祖代々の墓があると答えた人が約半数。生前に購入した人が1割、残りの4割は今のところお墓がないという結果だった。調査対象が500人と少ないものの、今の時代を反映しているな、と。

お墓がない人たちに、どんな埋葬方法がよいかと問うと、霊園・共同墓地などと並び、散骨や樹木葬が多かったのが印象的でした。

酒井 私は、漠然と樹木葬がいいなと思っています。