左から、東ちづるさん、酒井順子さん、島田裕巳さん(撮影:本社写真部)
父の死を通して意思を伝える大切さを実感したという東ちづるさん。両親と兄に先立たれ家族でひとり残された酒井順子さん。変化する死のあり方と看取りのリアルについて、宗教学者の島田裕巳さんと語り合いました。後編はお金のお話からーー(構成=篠藤ゆり 撮影=本社写真部)

〈前編よりつづく

終末期医療はケースバイケース

 お金についての話は大事ですね。私は親にまず、「本当に借金はないの?」と聞きました。親が亡くなった後、借金が判明したという話をけっこう聞いていましたので。

島田 遺産に関しては、少額財産のほうが、きょうだいでもめるケースは多いようです。それに今は離婚、再婚が増えているので、相続に関しては複雑化しています。

 そんなことになるくらいなら、どこかに寄付したほうがよさそう。

酒井 私の場合、親が亡くなった後、「あれ、こんな保険証書が出てきた」とあたふたしたので、財産に関して明文化するのは一番基本的な終活だと思っています。自分に関しても、ちゃんとやっておくつもりです。

 将来的に介護が必要になったときの方針も大事。酒井さんは結婚していないけれど、パートナーはいらっしゃるんですよね。将来の介護については、何か話していますか?

酒井 今のところはしていません。将来、介護をする覚悟は一応できているつもりなのですが。

 こればかりは、どちらが先か、いつ始まるかもわからない。うちの夫は年下で、健康だけが取りえみたいな人でした。ところが難病にかかり、47歳から2年間寝たきりになり、今は歩行困難で車いす生活です。私が先にいなくなったらどうするのか。その話をふると、「やめて、考えたくない」と、思考停止するみたいです。

酒井 終末期医療に関することも、終活の必須項目ですよね。私は、延命治療はしてほしくない。

 その場合はちゃんとその旨を書いて、日付を入れて捺印しておいたほうがよさそうです。本人とご家族、医療の3つがうまく連携しないと、希望通りにはいかないケースもありますから。

父が亡くなる前、手術後に父の眉間に縦ジワが寄っていたので医師に聞いたら、たぶん痛いんでしょう、と。「痛みを取ってください」とお願いしたら、そのためには肝臓に負担がかかる点滴が必要だと言われました。でも肝臓の負担を回避しても、この先そう長く生きられるわけではない。そう食い下がったら、ここは終末医療の場ではないと怒られました。

島田 医療というのは「生かす」ためのもので、「死なす」ことは一種の敗北ですからね。ただ、今みたいに高齢化が進むと、むしろ死なせ方のほうが重要でしょう。

酒井 昔よりは、そういうことに対する理解が深まったようには感じます。緩和ケアをしてくれるホスピスも、増えてきたようですし。