東 うちの父の場合、私は医師に「先生のお父さんだったら、どうしますか?」と尋ねました。そうしたらようやく、痛みを取るための点滴をしてくださった。すると父の眉間から縦ジワが消え、顔もピンク色になって。
島田 胃ろうについては、最近まで、しないほうがいいと思っていました。ところが、松山俊太郎というインド学の先生が、晩年に胃ろうをして体内に食物が入ったら元気になったんですよ。そこから亡くなるまでの間、原稿を書いたり本を読んだりできるようになった。
それを見ていて、最後にやりたいことがあったら、これもひとつの選択肢なのかなと考えるようになりました。僕も胃ろうをしてもらって、その状態がどういうものなのかを書き残しておきたい。そういうことを考えると、終末医療に関しても本当にケースバイケースだなと思います。
東 年齢によって自分の考え方も社会の状況も変わっていきますしね。
葬儀とお墓をどうするか
島田 代表的な終活のひとつが、葬儀の方法や墓の選択について事前に決めておくことです。ここ数年の傾向として、葬儀は簡略化の方向に進み、「家族葬」が増えています。そのせいか、葬儀に呼ばれる機会も減りました。最近は、火葬場に直行して荼毘に付すだけで終える「直葬」も、首都圏では4分の1を占めています。
酒井 その一方で、簡素化を恐れる葬儀業界の人たちの、取れるところから取らなくては、という気迫がすごい。よっぽどしっかり考えていないと、素人はしてやられるな、という気もします。
東 戒名も葬儀も、値段によってランクがある。親たちもそれをなんとなく知っているから、「葬儀はしなくてもいい」と言うのかもしれません。
酒井 母の場合は突然死に近い感じだったので、アワアワしている間にことが進んでいってしまった気がして。これが果たして母の望んでいる形だったのか、と後から思いました。
東 だからこそ、より具体的に親と話しておいたほうがいいですよね。