人類の生んだ最も偉大な発明
それにしても科学が進み、AIと宇宙旅行するような世界で食べる宇宙食の味気なさそうなこと! 又、性の香りが全くしないことも、この映画の特徴だ。
現代では結婚や出産をしない人も増えた。医療が進み、若さを保つ様々な方法が試されて、「最後は脳の機能だけ残して永遠に生きることも可能」等と言われ始めている。
しかしそれで幸福なのだろうか? 家族との想い出や愛もなく長生きすることが?
最初は単為生殖で自己増殖していたバクテリアのような有機体が、『性』をもつ事で交配が可能になり、命に様々なバリエーションが生れた。性を通してやがて人は「愛」というものを発明し、人知を越える力を「神」と呼んで崇拝した。私はこの二つが、人類の生んだ最も偉大な発明と信じている。そして神も愛も、「人間は死ぬ」という前提のもとに存在する。
『ツァラトゥストラ』をテーマ曲にしたのは示唆的だが、19世紀にニーチェによって、「神は死んだ」とされた。20世紀は科学万能主義が跋扈し、電力によって私達は暗闇を失い、化学兵器での戦争を経験。人間には制御不能な核やAIも発明され、権利思想や自由主義、資本主義経済は家族を解体、私達を孤独に閉じ込めたかもしれない。