大切なものとは何か
この作品の一番のテーマはなんだったのだろう。それは第8回から最終回まで描かれる夕日野団地の建て替え計画の中にあるはずだ。
夕日野団地は新築だった1960年代には羨望の的だったが、今や至るところ傷だらけ。エレベーターもなく、不便だ。このため、マンションへの建て替えが決まった。
佐久間はマンションには移らず、千葉に住む息子の家に転居することになった。悪い話ではないはずだが、佐久間は団地への未練が強く、涙ぐみながら、こう漏らす。
「私、好きだったのよね(この団地が)。だって、いろんな思い出があるもの」
家族や近隣住民との楽しい日々である。この作品は団地という住居形態を讃えているわけではなく、どこに住もうが幸せになるためには家族や隣人たちとの良好な関係が大切であると静かに訴えている。また、近所付き合いを厄介なものと考える風潮が強まるばかりだが、それに疑問を投げかけているのだろう。
ノエチとなっちゃんの場合、大切なものに幼なじみとの結びつきが加わるのは言うまでもない。
文◎放送コラムニスト 高堀冬彦

11月3日の最終回は…1年後。野枝(小泉今日子)は非常勤講師の口を失い、昌夫(橋爪功)や節子(丘みつ子)の世話をしながら近所でアルバイト中。奈津子(小林聡美)も行きつけの喫茶店の仕事を手伝うなどしながら、相変わらずまったり過ごしている。賢一(塚本高史)父娘の動画配信で団地がバズるなど、この1年、家族やご近所さんにも変化はあったが、またいつもの日常を取り戻しつつあった。そして、年の瀬がやって来る