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養生に熱心になった本当の理由

僕にとっての幸福は何かというと、自分や家族が病気にならないことです。僕は早くに家族を失いました。両親とも若くして死にましたし、5人きょうだいでしたが、そのうち2人は幼いうちに死んでいます。一緒に帰国した弟は、40代で世を去りました。そういう意味では、不運な家族かもしれません。

僕自身、子どもの頃は腺病質でした。それなのに、平均寿命を超えて92歳という年齢まで生きることができた。何より仕事を続けられていることが本当にありがたいですし、とにかく幸運だと思っています。

自分の話で恐縮ですが、『日刊ゲンダイ』の連載は、昨年12月に1万2000回を迎えました。49年間ストックなしで毎日書き続け、一度も休んだことはありません。

決して体が丈夫ではなかった僕が好きな仕事を続けられたのは、ひとつには「養生」を趣味にしてきたことが大きいと思います。体が弱いと自覚しているからこそ、なんとかカバーしていこう、と。それを面白がって楽しめる性格に生まれたことも、運がよかった。

僕はもともと片頭痛持ちでしたが、自分なりに研究して養生法を見つけ、10年かけて治したんですよ。それこそ、人に言えないヘンテコリンな養生法もたくさん試してきました。(笑)

誤嚥予防を一年のテーマにしたこともあります。誤嚥は、転倒と並んで高齢者が最も注意すべき日常のリスクのひとつ。ですから僕は、水を1杯飲むにも「さあ、これから水を飲むぞ」と意識して、体に指令を出して飲みます。

また、飲み込む力を維持するには、しっかり息を吐けることも大事です。でも、息を吐く運動なんて大変で仕方ない。試行錯誤した結果、口笛を吹くのがいいと気づきました。昔の人は「夜中に口笛を吹いてはいけない」と言ったものですが、僕は寝る前に平気で口笛を吹いています。

ほかには、瞼(まぶた)を上に上げる体操や聴覚を維持するためのエクササイズ、そしてものを書く商売ですから、腱鞘炎を予防する養生も続けています。