こうして話すことはまだできるけれども、書くとなるとね……。考える力が本当になくなってきていますよ。昔は料理するのが好きだったんです。料理は頭を使いますでしょう。買い物に行って美味しそうな旬のものを見定めて、おかずを考えて。帰って来たら、料理の段取り。
それが今はもう外出しなくなりましたからね、買い物に行かない。だから美味しい食べ物に出合えないし、食欲が湧かない。そもそも、食べることが面倒くさい。
そんなふうに、いろんなことが面倒になったっていうのは、やっぱり生きるための根底の力が萎えているんだと思うんですよ。それでやたらに心配性になる。たとえばお手伝いの人が来るのが遅かったりすると、もう来なくなるんじゃないかしらとか、そういうね、つまらないことが頭にこびりつくんです。
日常的なことを自分ひとりの力で運営することができなくなってきているわけですよ。そうすると家族やお手伝いさんや誰かに頼らなきゃならないでしょ。そのお手伝いさんが今日は時間が過ぎても来ないというだけで、ものすごく不安になる。
自分が何かをやる、何かの行為をするということに対する自信がなくなっているのね。肉体的な自信のなさ。しょっちゅう誰かにもたれかかっているという感じですね。
(しばし沈黙)
今は平気で100歳になったって言うけど、昔は100になったって言ったら大変な長命ですものね。