昨今は長生きでおひとり暮らしの女性も増えています。平均寿命を見ましても、男の人のほうが早く亡くなる方が多い。今は夫婦でいる人も、夫を見送ったあとは、みんな「おひとりさま」です。

――そうねえ、うちの孫が30いくつになってると思うんですけど、戦前だったら、行き遅れだとかなんとか言われる年齢ですね。そのうち親は死んじゃうんだから、収入がなかったらいったいどうするつもりだ、なんて言われてね。女性の仕事が限られていた当時は、生きていくために結婚が必要とされていた。

その点では、今は楽になりましたね。いつまでも結婚しなくたって誰も何も言わない。うちの孫なんか好き勝手やってますよ。

今は女性がひとりで食っていけるようになった。これは大きいですよ。その気になれば、男並みに働ける。私も一生懸命書いて、別れた亭主の借金を返して働いてきたけど。もうさすがに仕事はおしまいね。

 

日々の暮らしでは、娘の響子さんや孫の桃子さんの助けを借りることも増えましたか。

――娘や、孫なんかからは、もう完全に老婆扱いされてますよ。

響子はね、滑舌が悪いのよ。何を言っているかわからない。その点、孫の桃子は、声に力がある。おばあちゃんと話をする時は明晰に喋る、というのが身についているんですね。そういうことがきちんとできている。利口な子なんだなあと思います。

電話がかかってきたり、人が見えたりして、桃子が私に報告に来るでしょ。その時に、最初の一声が聞こえにくかったりするわけですよ。すると私が聞こえづらいんだなというのをさっと察して、すぐ大声になって言い直す。いろんなことを吞み込んでるっていうか。

いちいち言わなくても察してくれるから、楽ですね。あれはやっぱり一種の若さだと思います。だから今、生活してて一番必要なのは、桃子ですね。
(2024年6月収録)

 

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