佐藤愛子さん
エッセイ『思い出の屑籠』の連載終了後も、佐藤愛子さんの様子を誌面で伝えたいと編集部は佐藤邸をたびたび訪問。佐藤さんを主人公とした映画『九十歳。何がめでたい』が世間でヒットしていたころ、100歳だったご当人はいかに――(聞き手・構成:本誌編集部 撮影:宮崎貢司)

100歳を超えた佐藤愛子さんは今、どのようにお暮らしなのか? と映画を観た皆さんが興味を抱くことと思いまして、今日はお伺いしました。

――どのようにお暮らしかなんていうのは、何か仕事をしているから、ああだこうだと言えるわけですよ。私はもう書くことをやめましたから、話せるようなことは何もないんです。

 

100歳まで生きて、朝起きて夜寝るまで元気でいらっしゃるというだけでも、価値のあることです。

――朝起きて、1時間ほどしたら寝てますよ。それで目覚めてなんか食べて。それからまた寝てます。

やっぱり100歳を過ぎるとね、疲れる。何もしなくても体が疲れるんです。ただ座ってるだけでもう、疲れてますよ。(笑)

でも人が来てくださると、わりと元気の出るたちでね。誰も来ないと寂しいですよ。

ずっと、編集者や誰かが来る習慣があったでしょう。今はもう誰も来ない。そうすると私はもう世の中の流れから外れてしまった人間なのだと感じます。世間が動いて流れていくのを、遠くのほうでぼんやり見ている。そういう意識になるから、元気もなくなります。

しかし編集の仕事も大変ですね。私には務まらないわ。機嫌のいい作家ばかりじゃないでしょうし。怒りんぼの佐藤愛子の相手は大変だったでしょ。でもやっぱり話していて楽しいのは編集者ですね。