昨年12月、浪曲師としても吉本興業所属タレントとしても初の人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定された2代目京山幸枝若さん(70)。2月28日は大阪・なんばグランド花月で「人間国宝認定記念公演」も開催します。かつて隆盛を誇った浪曲というジャンルに身を投じる中で感じる世の中の変化。そして「今からがスタート」と語る心根にあるものとは。
(取材・文・撮影:中西正男)
(取材・文・撮影:中西正男)
人間国宝に認定
いわゆる人間国宝の報告の電話があったのは去年の6月末だったと思います。
完全に寝耳に水で、まさかそんなお話が自分にいきなりやってくるとは思っていなかったので、きょとんとしていたら向こうのほうから「もしかして、詐欺やと思ってませんか?」としゃれた問いかけもしてもらいました。(笑)
それくらい驚いてましたし、本当に詐欺じゃないかとも思うほどでしたけど、担当の方が私のこれまでの経歴だとか、どこでやったどの公演をもとに認定に至ったかを細かく説明してくださる中で「あ、これは本当のことなんだ」と思えていった感じでした。
まさかという思いはあったんですけど、なんとか浪曲に光を当てる意味でも大きなきっかけはないものか。明治、大正、昭和にすごく流行っていた芸ではあるが、もう今はほとんどの方が浪曲と言ってもピンとこない状態にもなっている。その状態を何とかしたいとは強く思ってきたので、浪曲が重要無形文化財に認定されたことはただただうれしいことだと心底思っています。
人間国宝に認定されて、自分自身は特段何かが変わったということはないんですけど、景色が変わったというか、周りの状況が変わったというのは感じています。関西の演芸では最初に桂米朝師匠が認定されていろいろなお話もうかがっていたんですけど、まさかそれが自分にもとは思ってませんでした。これを機に浪曲という言葉だけでも知ってもらう。好き嫌いの前に、まずは知ってもらわないと何も始まりませんからね。