適応免疫の記憶が弱まり病気になり易くなる

「風邪をひきやすくなったり、また治りにくくなるのも、免疫機能低下の表れ。たとえば、体の中では毎日がん細胞がつくられますが、自然免疫が働き、それを『異物』と認識して退治することでがん化せずに済んでいます。ところが50代以降は、この異物として認識する力が弱まるため、がんが増加するのです」(久住先生。以下同)

適応免疫も同様に衰えます。

「子どもの頃に罹患した水ぼうそうのウイルスは体の中に存在していますが、その記憶が弱まることでウイルスが活性化し、帯状疱疹を発症しやすくなります。国の対策として、50歳以上の人に帯状疱疹のワクチン接種が推奨されているのも、そうした理由からです」

粘膜のバリア機能が弱まることも、感染症にかかりやすくなる要因です。

「鼻やのど、腸などの粘膜の表面は、ムチンと呼ばれるねばねばした成分でおおわれ、細菌やウイルスが直接、体の組織に触れないように防御しています。ところが、加齢とともにこのムチンの産生力が低下。また、腸の粘膜は、若いときには高級絨毯のように厚みがあり、ひだが詰まっていて、おいそれとは病原菌が中に入れない構造になっています。けれど、それも薄くなり、病原菌が入り込みやすくなるのです」