【人物を描く】
「Asparagus Paradise」(1977) タイトルにも遊び心満載

 

いくつバンドエイドを描いても、一つとして同じにはならない。その過程が面白くて、自身の語彙を増やすようにカミソリ、ヘアピン、おろし金……と、「実験」を続けました。おろし金のときは銅製のおろし金を銅板の上に出現させたので、刷りに際して銅版の余分なインクを拭う工程で、気づいたら手が血だらけになっていたことも。

それらの作品を集めた大学4回生(75年)のときの初個展では、「新人誕生!」と美術界で話題にしていただき、銅版画家としてのスタートを切りました。

人が考えないことをしないと、突き抜けたものは生まれない。決められた形やテーマのなかで描いても、「自分らしさ」は出せない。だから私はテーマを生み出し、サイズも思いっきり冒険しました。たくさん失敗しましたが、それも含めてとにかく楽しい学生生活だったのです。

日が暮れてもお腹がすいても夢中で遊び続けた……幼少期のあの感覚。一枚の版画のなかで一つの静物を繰り返し描きながら、そのなかに私自身が感じた小さな驚きや感動を入れ込み、さらには、人物も登場させるようになっていきました。

 

【人物を描く】
「From Noon to Moon」(1979) 疾走するトラックに乗るカポーティ