地味~に、コツコツとやっている
――麻実さんはこれまでに、長いキャリアの中で、ギリシャ悲劇やシェイクスピア劇など、歴史に翻弄される人物を数多く演じてこられました。日本的な「もののあはれ」にも、共感されますか。
麻実 自分に自信がないから、移り変わるものに関して共感するし、歴史に翻弄される役を演じたいと思うのでしょうね。毎回、舞台に向かうのは、とても怖いんです。何もないところから作り上げていく作業が、大好きなんですけど、役者として与えられた責任に、いつも足がすくむ思いで。だから、ずっと地味~に、コツコツとやっているのね。今までもずっと地味でしたし、これが一生続いていくんでしょうね。
湖月、咲妃 いえいえ、たーこさん(麻実)が地味だなんて、そんな。
麻実 みんなもそうでしょう? 地味にコツコツ取り組めない人は、役者を続けられないと思う。
湖月 大先輩のたーこさんの前で言うのは畏れ多いのですが、私も本当に自信がなくて。
麻実 本当?
湖月 本当です。地味なことをコツコツやるのがいかに大事か。それは身に沁みて感じています。宝塚時代も無我夢中でしたが、退団後もダンスなど基礎の基礎を毎日、コツコツ続けています。
咲妃 語弊がないといいのですが、今、お二人の言葉をうかがって、私は励まされた思いです。このお二人にして、そうなのか、って。私自身、演劇に触れたのは宝塚音楽学校に入ってからでしたが、その時にはじめて、何かを演じることで、自分の心が表現できる、と思えたんです。それはまさしく自分に自信がなかったからで、そんな私が誰かの言葉を通じて、イキイキとできた。そのことがお芝居に傾倒するきっかけであり、今にいたるまで、私の救いになっているんです。