きっとわっちは一生忘れないよ

すると瀬川。

「何言ってんだい。馬鹿らしくて面白かったって言ってんだよ」

と笑顔で蔦重へと伝えます。

作業をする手を止め、驚いた様子で瀬川の顔を見上げた蔦重。

さらに蔦重の横に座った瀬川は、

「このバカらしい話を重三がすすめてくれたこと、きっとわっちは一生忘れないよ。とびきりの思い出になったさ」

と伝え、一瞬だけ蔦重の手に触れると「じゃ、返したよ」と本を手の上に乗せてその場を去っていきます。

うなだれる蔦重。本をめくると、足抜けをすべく手渡した通行切手が、半分に破られて挟まっているのをそこに見つけるのでした。