終身雇用はすでに崩壊していた
終身雇用の崩壊は、まず、1990年代に就職氷河期という形で現れました。多くの企業が、社員の雇用を守るために、新卒学生の採用を大幅に削減したからです。
さらに、派遣社員や業務委託といった形での働き方が広がりました。その結果、雇用が安定している正社員と、雇用が不安定な派遣社員・業務委託という二極化が進行します。
終身雇用は、正社員の世界の内側でしか維持できておらず、日本社会全体で見れば、すでに崩壊していたということになります。そもそも、正社員の世界とその外側で雇用の安定性を分けるのは、社会のあり方としては持続可能ではないように思います。
他の先進国の多くでは、正社員かどうかという雇用形態に関係なく、雇用は平等に安定的であり、同時に平等に不安定です。それに対して、日本の場合には、正社員の終身雇用を守ることが最優先された結果、正社員でない形での雇用がその犠牲となって過度に不安定になっています。
そして、ここまでして守ってきた正社員の終身雇用すら維持できなくなっているのは、経団連会長やトヨタ社長(いずれも当時)の発言から明らかです。終身雇用が崩れていけば、当然、それを前提とする社会の仕組みや「あるべき姿」も変わってきます。