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2024年は、数々の日本のホラー小説が注目された。フィクションをドキュメンタリーのように見せかけて演出する「モキュメンタリー」(擬似を意味する〈モック〉と〈ドキュメンタリー〉の混成語)手法をとった作品が、多くの読者をひきつけた。ユーチューバーとしても活躍するホラー作家、 雨穴(うけつ)さんの『変な家』シリーズや、背筋さんの『近畿地方のある場所について』などホラー小説が大ヒットするなか、ファンタジーホラーの傑作がリバイバルした。その背景に、何があったのか?

13年ぶりの刊行の本が話題

2025年1月に刊行された新井素子さんの『くますけと一緒に 新装版』が、書店員さんの間で話題となっている。発売後に即重版が決定し、2月17日現在3刷、文庫ランキングで1位になるお店も出ているという。新装版で、13年ぶりの刊行の本になぜ注目が集まっているのかを、書店員さんに聞いた。

『くますけと一緒に』(著:新井素子/中央公論新社)書影
『くますけと一緒に』(著:新井素子/中央公論新社)

新井素子さんによる『くますけと一緒に』は、1991年に単行本が刊行され、これまで複数の出版社が文庫化。最後は中公文庫で2012年に文庫化され、2020年代には入手困難な本となっていた。

<あらすじ>
あたしは悪いことなどしていないのに、いつも嫌われていた。
同級生、そして両親にも。そんなあたしを気にかけてくれるのはママの親友・裕子さんと、くますけだけ。
悪い人は死んでしまえばいい――。
願うと同級生は事故にあい、両親も死ぬ。裕子さんに引き取られたあたしは、ここでくますけが邪悪なぬいぐるみなんじゃないかと思いはじめ……。

2012年に中公文庫になった際には、ファンタジーホラーの傑作また異色のホラーとして、ただ怖いだけでない、+αの要素が知られていた。

近年、雨穴さんの『変な家』シリーズや、背筋さんのモキュメンタリーホラー小説の大ヒットにより、あらたな読者が急増。そんな中、書店員さんから「復刊待望」の声が上がる。
新装版刊行のきっかけとなった、未来屋書店碑文谷店の福原夏菜美さんにお話を聞いた。