気遣いの方向
悠木 わたしなんかは、何だって聞きたがるしね、それはそうしないほうがいいとか、もう縁切ったほうがいいとかね(笑)。
渥美 それは女の人のよさですよね。
悠木 でも、勝手なことを言ってね、絶対よそで女を作っているとか、いい加減なことを。そのときは一生懸命考えるんだけれども、けっきょく何のたしにもなってないわけですよ。そういう気遣いというのは、わたしは一切ないのね。
渥美 そんなことないんじゃないの。それはやっぱり悠木ちゃんの中に、悠木ちゃんのちゃんとしたものがあると思うよ。あなたとても、そういうところは神経のこまかい人だもの。
悠木 バランスが悪いんですよね(笑)。こまかい部分と、すごくだめな部分と。
※本稿は、『人生、上出来 増補版 心底惚れた』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『人生、上出来 増補版 心底惚れた』(著:樹木希林/中央公論新社)
樹木希林さんが見つめた男と女、夫婦、家族。度肝を抜く言葉のジャブ、間を詰めて相手の本心を引き出す才知。稀代の男たちとの伝説の対談『心底惚れた』に、生前未発表「夫婦の最後を語る」インタビューを収録