やわらかな表情で夫婦が並ぶ貴重な一枚(『人生、上出来 増補版 心底惚れた』より。写真提供:希林館)
樹木希林さんが悠木千帆の名前で活動していた1976年、当時の男性著名人との対談連載が雑誌『婦人公論』で始まりました。30代前半の希林さんだからこそ聞けた、才人たちとの「男と女」にまつわる深い話。そして2025年3月、連載と新たに未公開インタビューを収録した『人生、上出来 増補版 心底惚れた』が刊行に。希林さんが夫婦について語った未公開インタビュー(2015年収録)より、一部抜粋してお届けします。

男は可愛らしい、女はしたたかだけど

ここへきて私たち夫婦もなかなかいい関係になってきましたね。ちっとも本質は変わらないのだけど、歳とともに、互いに互いの受け止め方が変わってきたんですよ。摩擦がなくなって、今はぜんぜん揉めません。

結婚当初、一緒に暮らしていた頃は毎日のように大喧嘩。言い合いじゃすまなくて、でも手だと痛いから、私はモノで叩いてたの。

内田(裕也さん)の頭から血が流れ出したこともあったけど、人から「どうしたんですか?」って訊かれて「女房にやられた」とは言えなかったんじゃない? 「ちょっと……」ってごまかしていたら、「どこの組の人にやられたのか」なんて騒ぎになったこともあったみたいですよ。(笑)

今は内田に同じことを同じように言われても、フワッと受け止めて、「なるほどね~」とか「わかるわよ」って答えて受け流すの。そうするとあちらも気分がいい。

本題はともかく、自分の意見に同調してくれたってとこに反応して穏やかになるのよ。男は可愛らしいわね。女はしたたかだけど。