どっかやっぱり不健康なわけ
悠木 わたし、男の人が好きなのね。頑張ったりするところが好きなの。もうそろそろやめたほうが楽になるんじゃないかなというところに、しっかりと頑張っているね。男の人が開き直ったら、いやだなあと思う。イロッぽくなくてね。
つか それを、頑張っているところを絶対見せたくないでしょう。
悠木 つかさんは、ほんとに、いわゆる二枚目の男じゃないけれども(笑)。いい意味のイロッぽさっていうの、きっとあるんでしょうね。
つか ぼくは学者になりたかったというところ、あるんですよ。ほんと。そういう俗物とか下賤なものを排除してきたみたいなところがあるんですよ。とっても、だから、てれくさいわけ、そういう話するの。
悠木 一回芝居にすればいいわけ? 自分が書くぶんにはいいわけね。
つか ありますね。たとえば太宰治とかいう人なんか、とても健康的だったと思うの。原稿用紙に書くときはね。日常はもっとつらかったかもしれないですよ。書いちゃえばいいんだからね。おれたちは、どっかやっぱり不健康なわけ。一回かまえてやるでしょう。
※本稿は、『人生、上出来 増補版 心底惚れた』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『人生、上出来 増補版 心底惚れた』(著:樹木希林/中央公論新社)
樹木希林さんが見つめた男と女、夫婦、家族。度肝を抜く言葉のジャブ、間を詰めて相手の本心を引き出す才知。稀代の男たちとの伝説の対談『心底惚れた』に、生前未発表「夫婦の最後を語る」インタビューを収録