企業はコストカットで対応

医薬品は、医療で使う・必要とするものであり、供給できないことは社会的信用の低下に繋がることから、製薬会社としても、「儲からないからもう売りません」とは言い難い構造があります。

『現代日本の医療問題』 (著:木下翔太郎/星海社新書)

そのため、繰り返される薬価引き下げに対して、コストカットなどで対応してきました。そうした結果、重要な「品質」「安全性」が軽視される結果となり、2020年以降、ジェネリック医薬品メーカーで品質不正が多数発覚する事態となりました。

特に、製薬会社「小林化工」が製造していた水虫の薬に睡眠薬の成分が混入した事例では、健康被害や交通事故が多数報告されたこともあり大きな批判を呼び※2 、同社は2021年に行政処分を受けています。

その他にも複数社が業務停止命令などを受けた結果、医薬品の供給が滞るようになり、医療現場で医薬品が使えなくなるという事態が生じるようになりました。

もちろん品質不正を行っていた製薬企業には問題があるのですが、そのような事態になった背景として、繰り返された薬価引き下げの結果、現場での行き過ぎたコストカット・安全軽視に繋がってしまったと考えられています。