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世界的に高く評価されている日本の医師制度。しかし、OECDの医療統計によると、人口1000人あたりの医師数は、日本は2.6人。OECD37か国の平均である3.7人を大きく下回ります。日本国内では近年、医師不足や診療科の偏在、医学部受験の加熱など、さまざまな問題が表面化してきました。そのようななか、千葉大学医学部在学中に国家公務員総合職採用試験に合格し、現在は慶應義塾大学医学部特任助教でもある、医師の木下翔太郎さんは日本の医療の現在地をさまざまなデータから俯瞰。いびつな構造を指摘します。そこで今回は、木下さんの著書『現代日本の医療問題』から、一部引用、再編集してお届けします。

繰り返された薬価のルール変更

近年、急速に生じている問題として、医薬品の供給不足の問題があります。

前述のように、日本では医療費の伸びを抑える必要があることから、その一環として、医薬品にかかる費用(薬剤費)を抑えるため、定期的に個々の薬の価格(薬価)を引き下げ、薬剤費全体が伸びないようにするという政策がこれまでとられてきました。

特に2018年度に薬価制度の抜本改革として、それまで診療報酬改定と合わせて2年に1度だった薬価の見直し(薬価改定)を、診療報酬改定のない年にも「中間年改定」をすることにして薬価改定を毎年行うことにするなど、薬価のルールの変更を繰り返してきました。

こうした結果として、新しい高額な医薬品が登場してきた中でも、既存の薬の薬価を下げるなどして、薬剤費全体は10兆円を超えないように近年推移してきました。例えば2025年度の薬価引き下げでは全体で2500億円の削減となっていました※1 。

これは、医療費抑制の観点ではうまくいっているように見えますが、他方で、製薬会社側の利益を減らすという形で負担を強いてきたことになります。