
加齢とともに耳の機能が衰えると、聞こえにくくなるのは仕方がない、とあきらめていませんか。日頃から耳をいたわることで、《聞こえ》は維持できるそう。難聴や耳鳴りに詳しい耳鼻咽喉科医の木村至信先生が、セルフケア法を指南します(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/岩田正恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)
聞こえづらさはうつや認知症につながる
年齢を重ねるにしたがい、聞こえづらさを感じる人は多いもの。「家族や周囲の人から『テレビのボリュームや話し声が大きい』と指摘されたり、人の話を何度も聞き返したりするなら、難聴は始まっているといえます。やがて会話が面倒になり、人づき合いや外出を避けることで、気力や体力が低下。音による脳への刺激も減るため、うつや認知症のリスクが上がることもわかっています」と解説するのは、難聴や耳鳴りに詳しい耳鼻咽喉科医の木村至信先生です。一般的に聞こえにくさを自覚するのは50 代から。歳だからと放置することで症状が進行し、75歳以上では実に半数の人が難聴ともいわれます。
「加齢による聞こえづらさの原因は、主に二つ。一つは耳の使い過ぎによる、聞こえの神経の老化です。もう一つが鼓膜の働きの衰えで、ほとんどのケースがこの二つの混合型。残念ながら、劣化した神経は再生しませんが、残った神経をいたわり、鼓膜の働きを活性化させることで、聞こえはある程度取り戻せます」(木村先生。以下同)聞こえの神経をいたわるためには、耳の血流改善を心がけることが大事です。「耳は冷えやすく血管も細いため、血流が滞りがち。マッサージをして血流を促すことで、神経に栄養を届け、劣化を食い止めましょう」
鼓膜の働きを活性化させるには、耳と鼻をつなぐ「耳管」がカギとなります。「耳管は、鼓膜の内側にある『鼓室』への空気の通り道。普段は閉じていて、空気が通るときに開く仕組みですが、加齢により開きにくくなります。すると、鼓膜の内側と外側の気圧のバランスが崩れ、鼓膜の変形や、働きの悪化の原因に。音がこもったように聞こえたり、小さな音や子音が聞き取りづらくなったりするのはこのためです」
耳管はトレーニング次第で開くようになるそう。
「耳管が開けば、聞こえづらさはかなり改善できます。そのためにも、耳のケアを習慣化することが肝心です」