医学部長と大学病院長は全て男性

このように就労を継続することが困難であることから女性医師のロールモデルも不足しており、2022年6月時点で、日本の全82大学医学部の医学部長と大学病院長は全て男性であったことが報告されています※3。

このように女性医師が妊娠・出産で離職する可能性が高いと認識されるようになってからは、出産で離脱する可能性の高い女性をそもそも受け入れなかったり、受け入れたとしても妊娠をしないよう求めたりする事例も数多くあったようです。例えば、麻酔科医の筒井冨美先生は次のようなエピソードを著書に書いています※4。

<時代は平成に移り、女子医学生率や女医率はじわじわと増えていったが、封建的な「白い巨塔」は変わらないように見えた。「入局後2年間は出産禁止」と公言する教授は、相変わらずよく見かけたし、その中には産婦人科医もいた。

関連病院への派遣にあたって、「在職中は妊娠しません」との誓約書を求められることもあったが、さしたる問題にはならなかった。妊娠などの理由で医局人事を拒否すれば「女は使えない」と公言されて、博士号やらアルバイト斡旋やらで露骨に冷遇され、周囲もそれを当然のことと見なしていた。>