月経困難が笑いのネタに

●職場と相談し計画出産したが、産休の代替があるはずがなくなり、産休後の仕事もなくなった。(非開示)

●うちの病院にいる間は妊娠しないでね、と言われたことがあります。(整形外科)

●月経困難で、緊急手術に入れそうになかったとき、理解のない医師からは非難・笑いのネタとなった。「腹痛でオンコール変わってくださいなんて、俺だったら明日からクビですね笑」(心臓血管外科)

●「どうせ教えても無駄になるんだから、女のお前には何も教えてやる気にならない」と面と向かって言われたりした。余りにも言われ続けたので、自分でも「結婚や出産で戦力外になる可能性もある」と思うと特別な経験が出来る機会を本当は挑戦したいのに辞退したりした。(非開示)

こうした状況が続いてきたことから、女性の診療科選択の傾向も男性と大きく異なっています。厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計(旧:医師・歯科医師・薬剤師調査)」で、診療科ごとの病院勤務女性医師の割合を公表される範囲で整理したものを表にしました(表10)。

診療科別の病院勤務女性医師の割合 図を拡大

全診療科の数字をみていただくと、全体として女性医師の割合が増加傾向にあることがわかるかと思いますが、それを受けて、どの診療科も女性の割合は増加しています。

しかし、2006年から2022年にかけて、もともと女性の多い皮膚科・眼科のような診療科と、女性の少ない外科系の診察科、という関係性は大きく変わってはいません。

※1 松永正訓、『開業医の正体』(中公新書ラクレ、2024年)

※2 Izumi, M., Nomura, K., et al. (2013). Gender role stereotype and poor working condition pose obstacles for female doctors to stay in full-time employment: alumnae survey from two private medical schools in Japan. The Tohoku

※3 Watari, T., Gupta, A., et al. (2024). Characteristics of Medical School Deans and University Hospital Directors in Japan. JAMA Network Open, 7 (1), e2351526

※4 筒井冨美、『フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方』(光文社新書、2017年)https://www.jpma.or.jp/vision/industry_vision2023/jtrngf0000001dg5-att/01.pdf

※5 エムステージ、『医師の65・0%が東京医科大学の女子一律減点に「理解できる」 当事者である医師の諦めの声を緊急調査』 https://mstagegroup.jp/2018/08/08/202

※本稿は、『現代日本の医療問題』(星海社)の一部を再編集したものです。

 


現代日本の医療問題』 (著:木下翔太郎/星海社)


日本の医療は世界的に高く評価されている一方、近年ではさまざまな問題を抱えていることも事実。医師不足、医薬品不足、マイナ保険証、医療費増大、美容医療、終末期医療、医学部受験の過熱……こうした医療の諸問題について専門的な言説は数あれど、今後必要とされる医療制度改革に向けて、国民一人一人が日本の医療を考え、議論するための一助として、包括的な見取り図を整理! 現役医師にして医療研究者である著者が豊富なエビデンスをもとに日本医療の現在地を分析する。